(9072:東証1部) 日本梱包運輸倉庫 2013年3月期業績レポート

2013/09/04

今回のポイント
・自動車、自動車部品を中心に、住宅設備、農業用機械、食品、雑貨等の商品、製品の運送、梱包、保管の各サービスを一気通貫で提供する総合物流企業。創業時からホンダ(株)との取引関係が強く、2012年3月期の売上構成比は11.8%。国内のみでなく海外においてもワンストップサービスを提供している。・13/3期は、売上高は前期比7.2%の増収。震災復興需要やエコカー補助金などの影響により、自動車関連の貨物量が回復したことに加え、タイの洪水で縮小していた自動車メーカーの現地生産が回復した事などから、業務量が回復した。業務効率の向上、減価償却費が減少したこと等で利益率が向上し、営業利益は同約3割の増益。株高、円安の影響で経常利益も大幅増益。

・14/4期も、自動車関連の生産や販売が回復し、貨物量の増加が見込まれる一方、円安に伴うコスト増も懸念され、小幅減益を見込んでいる。前期にあった有価証券や為替の評価益は見込んでいない。配当は40円/株を計画。配当性向は30%台に。

・配当性向引上げ、機動的な自社株買いなどの株主価値向上策と合わせ、目標ROE達成に向けた具体的な事業展開を盛り込むと見られる次期中期経営計画の詳細を注目したい。

会社概要
自動車、自動車部品を中心に、住宅設備、農業用機械、食品、雑貨等の商品、製品の運送、梱包、保管の各サービスを一気通貫で提供する総合物流企業。創業時からホンダ(株)との取引関係が強く、2012年3月期の売上構成比は11.8%。全国76営業所、関係会社22社107事業所の拠点によって顧客をきめ細かくカバー。1980年代後半より海外に積極的に進出。2013年5月27日時点で海外拠点は9か国22社となっており、国内輸送と同様に、海外においてもワンストップサービスを提供している。

【沿革】

日中戦争時、国策の運送会社に勤務し貨物輸送のノウハウを得た同社創業者の黒岩恒雄氏は上海からの復員後、株式会社日本運搬社に入社。取引先開拓に取り組んでいる中、本田技研工業東京営業所との取引を開始。重さ1トン近くの金庫移設を依頼された際、経験のない仕事にもかかわらず成功させ本田技研から高い信頼を得る。
その後自らのやり方で運送業のあり方を構築したいと考えた黒岩氏に対し、日本運搬社もその意を理解し、本田技研を顧客として引き継ぎ、1953年「株式会社日本梱包運搬社」として創立創業した。
元々は社名通り、対象物を「梱包」し「運搬」するだけだったが、顧客からの要請に基づき保管およびそのための「倉庫業」にも進出。またモータリゼーションの拡大、本田技研の四輪及び海外進出などに対応し業容を拡大。荷物を効率的に積載、運搬するための「二段積載車両」、「三段積フルトレーラー」、「日本初の車両伸縮式トレーラー」を開発するなどイノベーションにも積極的に取組んでいる。

【経営理念・ビジョン】

我々は、地球的視野に立ちビジネスロジスティクスを介し
【共有できる歓び】
【共感し得る価値】
【共生したる環境】
を先進創造し、お客様・株主様・従業員と共に社会の繁栄に貢献する。

【事業内容】

主要事業セグメントは「運送事業」、「倉庫事業」、「梱包事業」、「テスト事業」の4つ。
顧客数は単体で約2,500社。各営業所や拠点はコアとなるメイン顧客の運送、梱包、保管などのサービスを提供する一方で、その地元の企業を新規開拓する。営業所は拡大均衡の下での独立採算制度を採っており、営業力の強さは同社の大きな特長、企業文化と言えるようだ。
また、ホンダを主要顧客としている同社は、運搬車両の保有台数という点で各自動車メーカーのグループ内運送会社と伍して、トップレベルの保有台数となっている。

自動車、オートバイの完成車及び自動車部品、住宅設備、農業用機械などの輸送を行っている。
顧客の製品やニーズに合わせた特殊車両を保有し、効率的に大量輸送を行う体制を構築している。

また、省エネ、CO2削減ニーズからモーダルシフト(自動車による輸送から鉄道による輸送への移行)へも対応。
31フィートウィングコンテナ及び二段コンテナを保有し、12フィートJR汎用コンテナの活用を含め、多種多様な輸送ニーズに対応している。ニーズに合わせた特殊コンテナの開発にも注力している。
また、日本国内だけではなく海外においても自動車、オートバイの完成車、部品の輸送を行っている。

運送に使用するトラックは全て購入し、4年で償却している。

自動車、オートバイの完成車及び自動車部品、住宅設備、農業用機械などの保管を行っている。
日本全国に合わせて1,068,210m²、およそ東京ドーム23個分の倉庫設備を所有している。(2013年1月1日時点)
米穀などを保管する低温倉庫や文書・書類保管などに必要な湿度・温度管理設備など、ニーズに合わせた倉庫を用意しており、入出荷管理のノウハウなど、50年近い歴史に裏付けされた実績と経験が強みとなっている。

倉庫事業の利益率が約25%と高いのは、従来から土地を購入し、自前で建築するという投資を積み重ねてきたため。法定償却年数26年のところを、同社は10年で回収している。

流通加工、自動車部品等の納入代行や輸出梱包等のほか、包装仕様の設計やバケットや台車といった梱包資材の開発など、広い分野でニーズにあった各種流通加工サービスを提供している。

主として自動車、オートバイの耐久試験、風洞実験、実機テストや走行テストなどを行っている他、設計・解析、試作・組み立て、オーバーホール(機械製品を部品単位まで分解して清掃・再組み立てを行い、新品時の性能状態に戻す作業)なども手掛けている。

加えて、企業活動のグローバル化進展に伴い、海外での物流も総合的に支援する体制を構築している。

アメリカ、中国、インド、タイ、インドネシア、ベトナム、フィリピン、ブラジル、メキシコの9か所にグループ会社を設立し、日本国内と同様の物流サービスを提供している。
この拠点を通じ、国内輸送~通関~現地配送はもちろんのこと、生産設備の解体から現地据え付けまで、ワンストップサービスを提供できる。
また「国内 ⇔ 海外」のみでなく、「海外 ⇔ 海外」についてもハイレベルの輸送サービスを提供している。
通関業の許可を受け、横浜、成田、神戸、福岡など日本を代表する主要な港・空港で通関サービスが提供できるよう全国に9か所の通関営業所を展開している。
2013年3月期決算概要
業務量の回復、効率性の向上により増収・増益を達成

売上高は前期比7.2%の増収。震災復興需要やエコカー補助金などの影響により、自動車関連の貨物量が回復したことに加え、タイの洪水で縮小していた自動車メーカーの現地生産が回復した事などから、業務量が回復した。
また、業務効率の向上を図った事、減価償却費が減少したこと等で利益率が向上し、営業利益は同約3割の増益。株高、円安の影響で経常利益も大幅増益。関係会社の厚生年金基金脱退拠出金2.3億円、売却予定土地・建物の減損損失8.2億円などもあったが、関係会社株式取得時に負ののれんが発生(2.7億円)した事等もあり、当期純利益も大きく増加した。

(2)セグメント別動向
○運送事業

自動車業界の貨物取扱量が回復したことに加え、子会社2社の決算期を12月から3月に変更したため15か月分の財務諸表を連結したため+7.2%の増収。
増収効果、減価償却費の減少で+27.4%の増益。

○倉庫事業

保管貨物量の回復で+13.9%の増収。
保管効率の向上や固定費の削減で+18.2%の増益。

○梱包事業

タイ洪水被害からの復旧や、円安に伴う自動車業界の貨物取扱量回復で+3.7%の増収。
増収効果で+45.6%の増益。

○テスト事業

業務量の回復や新規テスト業務の獲得で+19.3%の増収。
増収効果と業務効率化により+156.6%と大幅な増益。

(3)その他動向

顧客業種別売上高では、タイ洪水被害からの復旧、国内自動車メーカーのエコカー補助金効果による生産量増加により自動車および自動車部品が前年比+13.7%、+1.7%とそれぞれ増加した他、一般貨物も増加した。一方、住宅は -1.4%と前年を下回った。

エリア別では、売上の89%を占める日本が前年比+6.5%の増加。タイ洪水被害からの復旧でアジアが+37.7%増と大きく伸びた一方、米国でオートマチックトランスミッションの再生作業量が減少したため、北米向け売上が -7.9%と減少した。

(3)財政状態及びキャッシュフロー

土地が18億円、投資有価証券19億円増加などで、資産は71億円増加した。
有利子負債59億円削減などで負債は37億円減少。
この結果、自己資本比率は前期末の67.6%から70.7%へ上昇した。

高水準の営業CFをベースに、フリーCFも超過を継続。有利子負債の削減をすすめ財務CFはマイナス。キャッシュポジションは19億円の増加。

2014年3月期業績見通し
貨物量の増加により増収ながらも、燃料価格や電気料金の上昇で小幅減益を予想

前期に引き続き、自動車及び自動車関連業界において生産や販売が回復しており、東日本大震災の復興需要に伴う貨物量の増加が見込まれる一方、円安に伴い燃料価格や電気料金の上昇も懸念され、小幅減益を見込んでいる。為替は1USD=95円の前提。
前期にあった有価証券や為替の評価益は見込んでいない。
配当は40円/株を計画。配当性向は30%台に。

成長戦略
同社は、2010年4月1日~2014年3月31日を対象とした中期経営計画を策定し実行中で、今期が最終年度となる。
元々は2013年3月までの3ヵ年計画だったが、東日本大震災の発生により、1年延長したもの。

上記のような数値目標を立てたが、東日本大震災やタイの洪水等事業環境の悪化により売上高は未達の見込み。
そうした中、方針を利益確保重視に転換した結果、円安による燃料価格高騰の影響で営業利益は4億円ショートするもののほぼ同水準に達し、売上高営業利益率、経常利益、当期純利益は当初目標を達成できる見込み。

具体的な取り組みは以下の通り。

海外展開力の強化においては海外拠点を新設し、「複合一貫輸送」体制を充実させる。また、メキシコからブラジル、アメリカへの輸入には関税がゼロであることから、北・中・南米間の相互一貫物流を顧客に提案している。アメリカ、メキシコ、ブラジル全ての拠点に現地法人を有していることから、全ての流れを同社のシステム、インフラで一元管理できるため顧客のメリットは大きい。
AEO(Authorized Economic Operator)とは、貨物のセキュリティ面のコンプライアンスに優れた輸出入者等を税関が認定し、通関手続きの簡素化等の利点を付与するもの。輸入時には通常、輸入貨物引取り前に納税申告及び納税が必要だが、AEO認証取得により、納税申告前の輸入貨物引取りと事後の納税が可能になる。これによりリードタイムを短縮することができ、顧客に対し大きなメリットを提供することができるようになった。
自動車納車前整備業務は、販売会社に届けるところで業務を終えるのではなく、そこからユーザーに届く過程もビジネスにするという発想。

■設備投資計画について
リーマン・ショック前3年間は、年間120~160億円規模の設備投資を行ってきたが、リーマン・ショックを受け、30億円台に投資を抑制してきた。前期から再び投資を積極化し、73億円の投資を行い、今2014年3月期は200億円の設備投資を行う計画。
内訳は、倉庫など建物100億円、土地40億円、車両30億円、その他30億円。
これにより中期経営計画4年間の設備投資合計は339億円となる。

2014年3月期に竣工予定の主な拠点としては、甲府出張所(2013年5月竣工予定、以下同じ)、小川営業所(仮称、2013年7月)、奈良営業所(仮称、2013年9月)、日本運輸(株)関東LC(増設、2013年8月)、Celaya(仮称、メキシコ、2013年5月)、オートテクニックジャパン テスト用施設(仮称、2014年2月)などがある。

資本政策
成長戦略の更なる拡大に向けた設備投資
財務体質強化のための有利子負債の削減
株主への安定した配当の維持

という基本方針の下、2013年3月期は以下の様な資本政策を実施した。

期末配当を12円から25円に修正(2013年5月10日開示)。年間配当は24円から37円へ。配当性向は27.7%となった。
有利子負債を約60億円削減し、有利子負債残高は167億円へ。自己資本比率は70%台と安全性は十分高いと思われるが、独立系であるため健全性を常に意識しているとのことだ。
2013年3月25日に自己株式400万株を消却。

今期以降、株主価値を高めるために以下の施策を実行する。

従来20%台だった年間配当性向目標を30%目途と引き上げる。今期予想配当性向は30.6%。
ROE 8%を目指した事業運営を展開する。2013年秋発表予定の次期中期経営計画に反映させる。
自己株式の取得、消却を必要に応じて機動的に実施する。
今後の注目点
下記の表は主要陸運会社の業容及び財務指標、株価指標を比較したものだ。
売上高では9番目に位置する同社だが、営業利益率、ROAはそれぞれ9.4%、4.8%と10社中最も高く、ROEも上位に位置している。 

同社は、現時点では目標とする経営指標としてROEを掲げていないが、本文中にも記したように、今後は「ROE 8%」を目標とするということだ。
昨年11月以来の日本株の上昇でPBR1倍以下の銘柄はかなり減少したとはいえ、いまだ同社も含め1倍割れの銘柄は多数存在する。PBR1倍割れの背景としては、認知度の低さと低ROEが主たる要因と言われているが、同社の場合は、ROEを始めとした収益性の高さが投資家に十分理解されていないと言えるかもしれない。
もちろん、ROE 8%は絶対的に高い水準であるとは言い難いが、「ROEを意識した経営を行っていく。」というメッセージを投資家に伝えることは大変意味のあることだと考える。
配当性向引上げ、機動的な自社株買いなど他の株主価値向上策と合わせ、目標ROE達成に向けた具体的な事業展開を盛り込むと見られる次期中期経営計画の詳細を注目したい。

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