シンプレクス・ホールディングス(4340)

2011/02/08

金子 英樹社長

企業HP
基本情報
企業名
株式会社シンプレクス・ホールディングス
社長
金子 英樹
所在地
東京都中央区日本橋 1-4-1
事業内容
金融機関向けディーリングシステムなどの受託開発が主体。パッケージソフト開発も展開
決算期
3月
業種
情報・通信

四半期進ちょく/予定 通期財務状況 コンセンサス/目標株価 業種比較 業績トピックス

今回のポイント

会社概要
債券や株式等のディーリングシステムの開発やネット証券における個人投資家向けインターネット取引システムの提供等、金融機関が収益を上げるためのフロント業務(フロンティア領域)をサポートするシステム・ソリューションに特化。「高度な金融工学」、「豊富な金融業務知識」、「最先端IT技術」を融合し、業界において断トツの収益力を誇る。

<沿革>
97年秋、外資系金融機関ソロモン・ブラザーズの最先端技術をリードしてきたシステムチームのメンバーにより設立され、設立5年目の02年2月にJASDAQ上場。04年5月の東証二部上場を経て、設立から7年11ヶ月目の05年9月に東証一部指定替えとなった。現在進行中の「第二次中期経営計画」(~12/3期)では、製品ラインナップの強化と経営資源のシフトによるユニバーサル・マーケット・サービス(UMS)事業の拡大により安定的な高収益体質の確立を目指しており、10年10月には更なる業容拡大に向けた多様な事業展開を念頭に持株会社体制へ移行した。

<システム・インテグレーション(SI)事業と
ユニバーサル・マーケット・サービス(UMS)事業が二本柱>
システム業界におけるソリューションの提供方法は大きく二つに分かれる。一つは顧客の要望に沿って開発したフルオーダーメイドのシステムを納入し、その対価を得る売切型の受託開発モデル。もう一つは自社で開発・所有・運用するシステムを顧客に提供し、その利用料もしくはそこから発生する顧客の収益に連動した収益を受け取るサービス提供型モデル。同社では前者をシステム・インテグレーション(SI)事業、後者をユニバーサル・マーケット・サービス(UMS)事業と呼んでいる。
同社は、会社設立以来、SI事業により高い成長を実現してきたが、成長の持続と更なる収益性の向上を目指して、現在進行中の第二次中期事業計画においてUMS事業を育成中である。尚、事業セグメントは、「SI」、SIで納入したシステムの運用・保守の「保守」、UMS事業にけるシステムの「導入」と導入後に提供する「サービス」、子会社バーチャレクス・コンサルティング(株)が手掛けるコールセンターサービスの「アウトソーシング」、及び物販等のその他に分かれる。各セグメントの収益形態と売上構成比(11/3期上期実績)は次の通り。

2011年3月期第3四半期決算

前年同期比12.3%の増収、同3.9%の経常増益
連結売上高は前年同期比12.3%増の104.1億円。ストック型収益であるUMS(サービス)の売上が増加したものの、SI及びUMS(導入)の苦戦が響き、旧連結ベースでは同2.7%の減収。バーチャレクス・コンサルティング(株)の子会社化効果(13.8億円の売上寄与)でカバーした。
利益面でも、バーチャレクス・コンサルティング(株)の寄与(1.3億円の営業増益要因)で増益となったものの、旧連結ベースでは、戦略的な研究開発費の積み増し(7.7億円→10.5億円)や人員増強に伴う人件費(6.0億円→7.0億円)及び採用教育費(1.3億円→1.5億円)等の増加等で同1.8%の営業減益(業績予想下方修正の責任明確化の観点から、前年同期に1億円強を計上した役員報酬は全額カット)。金融収支の悪化や持分法投資損失の増加により経常利益が同3.9%の増加にとどまったが、税効果会計の影響で四半期純利益は同5.5%増加した。
尚、バーチャレクス・コンサルティング(株)の連結子会社化(10年8月)に伴う利益(段階取得に係る差益)76百万円、及び持分法適用関連会社(株)シーエムディーリサーチ株式の売却益24百万円を特別利益に計上する一方、資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額128百万円、バーチャレクス・コンサルティング(株)の事務所移転費用68百万円等を特別損失に計上した。

SIは、CRM/SFAシステムを手掛けるバーチャレクス・コンサルティング(株)の子会社化効果に加え、前年同期が低調だった事もあり旧連結ベースでも増収を維持。各案件が順調に進んだ事で売上総利益率も改善した(前年同期は不採算案件が発生)。保守は社内に保守部門を持つメガバンク向けSI案件の増加で減収となったものの、SIと同様に不採算案件の影響がなくなり売上総利益率が改善した。UMSでは、前年同期に大証FX(09年7月)や大和證券CDF(09年10月)がサービスインしており、この影響が今期のUMS(導入)の減収要因となる一方、UMS(サービス)の増収要因になっている。また、来期のサービスインを目指して、現在、次世代版SPRINTの開発(後述)を進めており、現行版SPRINTについては営業を停止している。この事もUMS(導入)の減収要因となった。利益面では、上期に発生した特定の好採算案件の寄与でUMS(導入)の売上総利益率が改善したものの、大証FXの取引の伸び悩みや(織り込み済み)と上期に特定のFX案件で発生した障害対応に伴うコスト増でUMS(サービス)の売上総利益率が悪化した。この他、バーチャレクス・コンサルティング(株)の連結子会社化に伴いコールセンター事業を中心としたアウトソーシングを今期より報告セグメントに加えた。

ディーリングシステムは、メガバンク向けのリピートオーダーが堅調に推移したものの、複数の大型案件が受注確定に至らず売上が減少。インターネット取引システムも、現行版SPRINTの受注を抑制した影響で減収となった。一方、CRM/SFAシステムはバーチャレクス・コンサルティング(株)の寄与で売上が大きく伸びた。

第3四半期(10-12月)の受注高は前年同期比44.9%増の37.9億円。旧連結ベースでは28.3億円と前年同期比微増ながら、バーチャレクス・コンサルティング(株)の受注9.5億円(SIで4.6億円、アウトソーシングで4.8億円)が上乗せされた。第2四半期(7-9月)の引き合いが弱かった事が第3四半期の受注の苦戦となって現れたが、第3四半期に入り3~6億円程度の準大型案件の引き合いが増えており、事業環境自体は改善傾向にある。
また、第3四半期末における受注残高は、バーチャレクス・コンサルティング(株)の受注残高の影響(24.6億円)もあり、101.7億円と前年同期(75.1億円)に比べて35.5%増加した。

第3四半期末の総資産は前期末比1.4億円増の104.9億円。借方では、未収入金や売上債権の回収が進んだ事や持分法適用関連会社(株)シーエムディーリサーチ株式の売却等で現預金が増加。バーチャレクス・コンサルティング(株)の連結子会社化で無形固定資産も増加した。一方、(株)シーエムディーリサーチ株式の売却で固定資産が減少。貸方では、未払金や長期有利子負債が減少する一方、純資産が増加した。CFの面では、未収入金や売上債権の回収が進んだ事等で営業CFが大幅に増加。バーチャレクス・コンサルティング(株)の連結子会社化による現預金の増加等で投資CFも黒字となり、フリーCFが前年同期の3.8億円のマイナスから19.6億円の黒字に改善。借入金の返済や配当の支払いで財務CFがマイナスとなったものの、現金及び現金同等物の第3四半期末残高は40.7億円と前期末比13.4億円増加した。

2011年3月期業績予想

通期業績予想に変更はなく、前期比7.4%の増収、同27.5%の経常減益予想
売上高は前期比7.4%増の150億円。次世代版SPRINTの今春完成を見据えて現行システムの受注を抑制するためUMS(導入)が大きく落ち込むものの、大証FX関連の収益が通期で寄与するUMS(サービス)が大きく伸びる他、バーチャレクス・コンサルティング(株)の寄与もありSIも増加する。ただ、大証FXの取引量の伸び悩みや上期に特定のFX案件で発生した障害への対応によるUMS(サービス)の利益率悪化が響き売上総利益率が2.1ポイント悪化する見込み。次世代版SPRINTの開発前倒しに伴う研究開発費の増加(10.9億円→17億円)等による販管費の増加もあり、営業利益は同25.8%減少する見込み。尚、旧連結ベースの売上高は130億円、売上総利益率は43.9%。
配当は1株当たり480円の期末配当(80円の増配)を予定している(同社は配当性向を10~15%とする完全業績連動型の配当を実施しているものの、今期については配当性向が20%となる見込み)。

第3四半期末の受注残高は前年同期末比35.5%増の101.7億円で、このうち第4四半期の売上計上予定分は35.0億円である。この他、受注残高に含めていないが、来期検収予定案件の進行基準にかかる売上が約3.4億円、UMS(サービス)のインセンティブ売上が約2.5億円見込まれており、これらを合算すると約41億円となり、第4四半期の予想売上高45.8億円の89.5%に達する。受注が確定していないものの、高い確度で今期中の受注及び売上が見込める案件の商談も進んでおり、売上高が下振れする可能性は少ないようだ。

第3四半期末の受注残高は前年同期比35.5%増の101.7億円。このうち、旧連結ベースの受注残高は77.1億円と過去最高を記録。バーチャレクス・コンサルティング(株)の寄与は24.6億円で、内訳は、SIが6.6億円、アウトソーシングが17.9億円。

中期経営計画
同社は、現在進行中の第二次中期事業計画(08/3期~12/3期)において、最終の12/3期に売上高150億円~200億円、営業利益50億円~60億円の達成を目指していた。しかし、次世代版SPRINTの開発前倒しに伴う研究開発費の上積みの影響や次世代版SPRINTの今春完成を見据えた11/3期下期における現行版SPRINTの受注抑制の影響を織り込む必要が出てきた事、及び売上高が今11/3期に1年前倒しで下限ラインを達成する見込みである事等を踏まえて第二次中期事業計画を修正した(正確には現在精査中であり、正式な発表は5月頃になる予定)。

会社側の概要説明によると、12/3期までの5年間としていた事業計画期間を13/3期までの6年間に延長すると共に、最終目標を売上高175億円~225億円、営業利益50~60億円とする。また、来12/3期については、売上高165億円~185億円、営業利益30億円~40億円としており、バーチャレクス・コンサルティング(株)の通期寄与(11/3期は3四半期分の寄与)が約8億円の増収要因となる他、今期一時的に新規受注を抑制しているUMS(導入)においても、今春から次世代版SPRINTをサービス化することで数億円の増収が見込まれる。利益面では、11/3期第3四半期(累計)並みの売上総利益率及び販管費40億円を前提としており、研究開発費については、次世代版SPRINTの開発で15億円と高水準で推移するものの、11/3期比2億円減少する見込み。尚、現在、商談が進んでいる大型案件(同社10億円超の案件を大型案件としている)の受注いかんでは、売上高が最大185億円程度に拡大する可能性があり、つれて営業利益も上振れが期待できる。

<次世代版SPRINTの開発について>
次世代版SPRINTの開発前倒しに伴う研究開発費の積み増しが、11/3期の業績予想の下方修正及び減益要因の一つであり、中期経営計画の修正要因ともなった。

次世代版の開発が必要となる背景及び開発のメリットは下記の通りだが、実際、この上期に特定のFX案件で障害が発生し、この対応に伴うコスト増でUMS(サービス)の売上総利益率が悪化している。同社はそれ以前から現行版SPRINTにパフォーマンスの限界を感じていたが、この事が前倒し開発に向けて背中を押したようだ。

現行版SPRINTは6~7年前のアーキテクチャ(設計思想)に基づくものであり、また、もともと特定の顧客向けに開発したシステムを顧客の同意を得て同社の知的財産とし、これをベースに開発したものだ。稼動後も更に改良やチューニングを加えて、様々な金融商品のトレーディングシステムとしてサービス提供してきたが、パフォーマンスが限界に来ていた。一方、一昨年7月にサービスインした大証FXの取引システムは最新のアーキテクチャを用いて開発したもので、次世代版SPRINTはこれをベースに開発が進められている。本年春の「くりっく365」(東京金融取引所)向けのリプレースを皮切りに、順次、現行版を次世代版にリプレースしていく考えで、既存顧客が全てリプレースした場合、年間約4億円の運用コストの削減が見込まれる。

取材を終えて
(1)SI事業の動向
前10/3期は大型案件(10億円超)7件の引き合いがあり、このうちの2案件を前期末までに受注し、期初時点で5案件の商談を抱えていた。5案件のうち、2案件(受注金額20億円超)を第2四半期までに受注する事を前提として11/3期業績予想を策定したが、このうち1案件は第1四半期に失注し、2案件(同一顧客のフロントシステムとミドルシステムの案件)は受注の結果判明が来期に持ち越しとなった。この2件は外資系のパッケージベンダーと競合しているが、受注を前提としたテストプロジェクト(全体の1/4程度の工程)をこの第4四半期から段階的に受注していく予定で、案件全体の正規な受注はテストプロジェクトの成否で決まる。残る2件のうち1件は受注結果の判明時期が来期に延期されたが、もう1件は今期中に判明する可能性ある(業績予想には織り込んでいない)。いずれも新たなビジネスモデルに対応したシステムの提案であり、顧客がそのビジネスモデルを採用するか否かが受注のポイントになると言う。この他、第3四半期に新たに大型案件の引き合いが複数件あり、案件化するべく提案・営業活動中のようだ。

(2)更なる業績の拡大と収益の安定に向けた取り組み
同社では、大証FXシステムを手掛けた実績等が評価され、昨今、大型SI案件の引き合いが増えている。ただ、大型案件の場合、受注の遅れや失注が業績に与える影響が大きく、また、提案から受注までの期間も長くなる傾向がある。このため、同社は提案段階を含め、常時20~30件の大型案件を保有できる体制の構築に取り組んでおり、メガバンク、三大証券、取引所向けのアカウントセールスを強化している。具体的には、これまでは人的リソースの制約から受動的な営業が中心であったが、ソリューション提案による潜在ニーズの掘り起こしを強化するべく、ヘッドハンティングを活用し豊富なセールスキャリアを誇る人材の獲得を進めている(目標数は5~6名)。
また、更なる成長に向け国内のみならず海外案件の取り込みにも注力していく考えで(第三次中期経営計画には、こうした戦略が盛り込まれる模様)、グローバル競争力のあるホールセールスプロダクトの強化にも取り組んでいく。この一環として、国内金融機関のアジア拠点向けのデリバティブシステム構築案件の営業を強化しており、この第4四半期には海外拠点向けの日本株注文システム(数億円規模)の受注が見込まれている。

(3)OTCの再活性化でビジネスチャンス拡大も
また余談になるが、FX取引における税制優遇措置のOTC取引への適用が議論されていると言う。どういう事かと言うと、これまでFX取引においては、税制面での優遇措置が取引所取引のみに適用され、OTC取引には適用されなかった。このため、大証FXのサービス開始もあり、FX取引の中心が取引所取引へシフトし、OTC取引が縮小傾向をたどると見られていたが、優遇措置の適用が決まれば、自由度が高いOTC取引が再び活性化する可能性が出てきた。OTC取引の場合、サービスを提供する金融機関等は顧客の注文に応じるために自らポジションを持つ必要があり、そのシステム開発にはリスク管理等のディーリング・テクノロジーも要求される。言うまでも無くディーリング・テクノロジーは同社の得意とするところであり、付加価値の取れる分野であるだけに今後の展開に期待が高まる(これはあくまで、余談であるが)。

いずれにしても、11/3期は上場来初の業績予想の下方修正を経験し、かつ、大幅な減益決算を余儀なくされる。しかし、上記のように原因の究明と分析は十分になされており、また、それを隠す事無く、甘んじて批判を受ける潔さも評価できる(役員報酬の全額返上も含めて)。「原因の究明と分析」、そして「甘んじて批判を受ける潔さ」は、「同じ過ちを繰り返さない」と言う意思と自信があればこそ。また、「アカウントセールスの強化」と「グローバル競争力のあるホールセールスプロダクトの強化」といった今後の対策も示され、既に実行に移されている。「事業計画の修正は褒められたものではないが、同社経営陣への信頼は揺るがない」と言うのが、本日の決算説明会での率直な感想だ。

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