(2154:JASDAQ) トラスト・テック 2012年6月期業績レポート

2012/09/20

今回のポイント
・12/6期は前期比13.8%の増収、同37.1%の経常増益。自動車関連企業の旺盛な人材需要の取り込みで技術者派遣・請負・委託事業の売上が同23.1%増加と大きく伸びた他、自動車や住宅建材関連企業向けを中心に製造請負・受託・派遣事業の売上も同6.8%増加。技能社員の求人コスト増等を増収効果で吸収して同42.0%の営業増益。 

・13/6期は前期比17.7%の増収、同42.3%の経常増益予想。自動車関連企業を中心に技術者派遣・請負・委託事業の売上が同26.9%増と伸びる他、期初には前下期の苦戦の影響が残る製造請負・受託・派遣事業も、複数の大型案件がスタートする2Q(10-12月)以降、回復に転じる見込み。配当は1株当たり200円増配の期末3,000円を予定。

・規制強化に加え、製造だけでなく開発も海外シフトを進めるメーカーが少なくない。しかし、依然として国内の開発・製造系人材サービス市場は膨大であり、同社が事業を拡大させるには十分。このため、強みである営業力と採用力を活かし、多様な顧客ニーズを取り込んでいく事ができるか否かが今後のポイントとなる。

会社概要
製造業の技術開発部門や製造部門を対象とした人材派遣及び業務の請負・受託を中心に事業展開。製造部門向け派遣・業務請負に加えISO9001の認証を受けた受託工場運営も手掛ける(株)TTM、障がい者雇用(清掃・梱包等の軽作業を中心とした業務)の共生産業(株)、及び香港を拠点に中国に人材サービスを展開する香港虎斯科技有限公司(HKTT)の連結子会社3社と共にグループを形成し、製造業に特化したトータルソリューションの提供を特長としている。
事業は、研究開発における技術分野の派遣、請負、業務委託を手掛ける技術者派遣・請負・委託事業、子会社の事業領域で製造工程業務等の請負・受託を手掛ける製造請負・受託・派遣事業、障がい者雇用促進事業と不動産賃貸事業に分かれる。

技術者派遣・請負・委託事業  事業主体:(株)トラスト・テック、香港虎斯科技有限公司(HKTT)

派遣期間の制限のない専門26業種のうち製造業の技術系の研究開発分野を中心に技術者派遣及び業務請負を行っており、技術者の人材紹介、紹介予定派遣にも対応している(技術者派遣が8割を占める)。尚、技術者派遣・請負・委託事業に就業する技術社員とは「常用雇用者」として期間の定めのない雇用契約を締結している。

製造請負・受託・派遣事業  事業主体:(株)TTM

売上の6割を派遣が占める。一方、請負は主に顧客企業の構内において、受託は(株)TTMの受託工場において、同社が業務遂行指示や管理業務を行うもので、一般の製造業同様に労働基準法等の関係法令の規制を受ける。尚、経営資源の効率化の観点から12年8月1日付けて(株)TTMを存続会社として、(株)TTMと(株)テクノアシストが合併した。

【強み:営業力、採用力】
(1)営業力

同社の強みは、営業力と採用力。このうち営業力とは、”顧客ニーズに対して多様な提案ができ、他社より多くの提案を行う力”であり、”顧客ニーズを整理し、「見える」ようにする力”である。多様な提案とは、アウトソーシング手法、人材、中長期の対応等の総合的な提案であり、顧客ごとに要件を詰めて、リーダーの選定からマネジメントまでを一貫して手掛ける請負・委託サービスを提案できる事が他の人材派遣会社にはない強みであり、他社より幅広く、かつ、きめ細かに顧客ニーズに対応できる事が営業力の源泉となっている。

また、顧客ニーズを正確で細部にわたり把握することにより人材を採用する際には就業希望者に対して正確な業務説明が可能となり、就業希望者と業務のマッチング精度の向上、その結果としての稼働人員の増加や高チャージ契約の獲得につながっている。

(2)採用力

一方、採用力とは、”面接を通じて就業希望者のスキルや将来の希望を把握する力”であり、”就業までをスピーディに支援する迅速な意思決定と組織力”である。また、既に説明している営業力とも密接な関係がある。

尚、昨今は就業希望者の層が変化し、一流メーカー勤務経験者の採用が増加している。これは、昨今の急激な円高等による経営難で活躍の場を失い、人材サービス会社へ応募するケースが増えているためである。こうした人材は同社の開発センター(後述)や請負事業所のマネージャー・リーダー候補の貴重な人材であり、同社にとっては請負・委託を拡大させる大きなチャンスである。
尚、開発センターとは、持ち帰った(受託した)開発設計案件の開発を行う施設である。

事業環境と成長戦略(13/6期の取り組み)
(1)事業環境

労働者派遣法の改正(12年10月施行)による規制強化が想定したほど厳しく無かったため、一部の顧客で派遣回帰の動きが見られる一方、労働契約法における有期雇用契約における規制強化(短期契約の禁止や賃金の引き上げ等)を受けて派遣から請負・委託へシフトする顧客も少なくない。
採用面では、国内でのリストラや海外へのシフトで活躍の場を失う技術者が多く、このため、技術者派遣・請負・委託事業における開発センターや請負事業所のマネージャー・リーダークラスの業務を担う事ができる人材が応募してくるケースが増えている。一方、まとまった数の人員確保が必要な製造請負・受託・派遣事業では採用状況がタイトになりつつあり、採用コストが上昇傾向にある。

技術者派遣・請負・委託市場の動向

平成21年度(H21/4~H22/3)労働者派遣事業報告の集計結果(確報版)」(厚生労働省)を基に同社が試算した開発設計・研究開発の技術系の派遣市場は6,500億円~7,000億円(国内派遣社員数98千人×1日8h当たりの月額派遣料金556千円×12ヶ月)。ただ、上記のデータは技術系派遣で稼動社員が大幅に減ったボトムの期間のもので、下限値の6,500億円は、柱である自動車関連でピークから4割減、電機・精密は半導体関連が半減、他が3割減の時のもの。現在、急速に回復している事から、同社では5年以内に9,000億円以上の市場に拡大すると見ている。

また、顧客企業の研究開発費のうち請負・委託可能な市場については、「平成21年度民間企業の研究活動に関する調査報告」(文部科学省科学技術政策研究所)を基に200億円と試算している(同報告書によると、同社の主要顧客の事業分野で社外に支出された研究開発費は3,705億円。今後、更に削減されると仮定して2,000億円とした場合でも、試験・評価・解析や一部の開発設計など10%程度、金額ベースで200億円は同社が対応可能な領域と考えている)。ただ、同社は既に一部の顧客から請負・委託による研究開発業務の受注に成功している事から、市場創設努力と認知度向上により5年以内に500億円以上の市場に拡大するのではないかと考えている。

以上の事から同社は「技術者派遣・請負・委託」の市場について、今後、9,500億円(派遣9,000億円+請負・委託500億円)に拡大すると見ている。ただ、一部の派遣需要が請負・委託にシフトすると予想される事から、内訳は派遣市場7,500億円、請負・委託2,000億円と考えている。

(2)成長戦略(13/6期の取り組み)

上記の事業環境を踏まえた同社の当面の重点戦略は技術者派遣・請負・委託の国内シェアの拡大であり、中心となるターゲットを自動車関連企業とし、同業界で増加するアウトソーシングニーズをいち早く取り込み、取引の深化・拡大を図る。また、中国に進出した日系企業の間で日本式の人材サービスに対するニーズが強い事を踏まえ、中国など海外案件への対応力の強化に取り組む他、事業基盤となる人材育成に向け教育研修の更なる充実を図る考え。

①技術者派遣・請負・委託の国内シェアの拡大

ターゲットとする自動車関連企業への営業を強化するべく、東海地区(トヨタ)、北関東地区(ホンダ)、南関東地区(日産)を中心に、組織強化と営業社員を増強する。また、12/6期末に開設した豊田、横浜、宇都宮の開発センターにおいて、自動車関連の開発設計案件の持ち帰り受託を推進する。

②中国など海外案件への対応力の強化

中国に進出する日系企業に中国人や日本人の技術者の紹介及び請負サービスを提供していく考えで、香港虎斯科技有限公司(以下、HKTT)が事業主体となっている。HKTTは、日系企業が望む日本式派遣と同様のコンサルティングサービス(社員の労務管理、教育、離職時の迅速な対応等)の提供を行っており、13/6期より紹介事業の強化にも取り組んでいる。また、日本国内での営業により、日本本社の予算・決済ルートを確保している点で現地の人材サービス会社に対して比較優位を有する。

③教育研修の更なる充実

企業の要求レベルの高まりへの対応や契約更新時の解約防止に向け、導入研修やスタートアップ研修を強化する他、配属企業先での資格(メーカー仕様資格等)や品質保証資格(品質管理検定等)の取得にも力を入れる。また、1人当たりの業務量と精度の向上(売上増につながる)を図るべく開発センターにおけるCAD研修を充実させる。

2012年6月期決算
前期比13.8%の増収、同37.1%の経常増益

売上高は前期比13.8%増の154.5億円。自動車関連企業の旺盛な人材需要の取り込みで技術者派遣・請負・委託事業の売上が同23.1%増加。製造請負・受託・派遣事業は下期に契約終了案件が増加し期末の稼働技能社員数が減少したものの、売上は同6.8%増加した。
利益面では、製造請負・受託・派遣事業での求人コスト増等で販管費の伸びが大きくなったが、増収効果で吸収。営業利益は6.2億円と同42.0%増加した。当期純利益が減少したのは、和解金1.5億円など特別損失1.7億円を計上したため。

技術者派遣・請負・委託事業:株式会社トラスト・テック、香港虎斯科技有限公司

売上高72.0億円(前期比23.1%増)、セグメント利益4.9億円(同58.6%増)。業績が悪化した一部の顧客企業の契約終了が上期末に発生したものの、自動車関連企業の旺盛な人材需要の取り込みで稼働率が期を通して高水準で推移。期末の稼働技術社員数は1,221名となり、前期末の1,104名から117名増加し、リーマンショック前の水準に戻った。利益面では、売上の増加による限界利益の増加で大幅な増益となった。

製造請負・受託・派遣事業:株式会社TTM

売上高81.9億円(前期比6.8%増)、セグメント利益1.5億円(同2.5%減)。上期は自動車や住宅建材関連企業向けを中心の技能社員の稼働数が増加したものの、下期に入り、生産調整や生産設備の統廃合に伴う契約終了案件が増加。期末稼働技能社員数は2,024名となり、前期末の2,315名から291名減少した。利益面では、下期の減速で売上が伸び悩む中求人コスト増による販管費の増加が響いた。

期末の総資産は前期末比1.3億円増の52.0億円。CFが黒字となった事で現預金が、利益を計上した事で純資産が、それぞれ増加。売上の増加で売上債権や未払費用(スタッフの給与)も増加した。自己資本比率は前期末比0.1ポイント改善の63.1%。流動性が高く、かつ有利子負債に依存しない(無借金経営)優れた財務内容が維持されている。

利益の増加や売上債権の回収が進んだ事に加え、税金費用の減少もあり、前期は2.3億円だった営業CFが4.7億円に増加。投資CFはわずかなマイナスにとどまり、3.9億円のフリーCFを確保した。当期は特別損失を計上した事等で配当性向が75.1%に上昇したが、配当金はフリーCFで賄われ、現金及び現金同等物の期末残高が17.4億円と前期末(16.2億円)比1.2億円増加した。

2013年6月期業績予想
4期連続の増収・増益を見込む

売上高は前期比17.7%増の182億円。自動車関連企業を中心に技術者派遣・請負・委託事業の売上が同26.9%増加する他、期初には前下期の苦戦の影響が残る製造請負・受託・派遣事業も、複数の大型案件がスタートする第2四半期(10-12月)以降、回復に転じる見込み。利益面では、管理部門の増強や求人・採用費の増加等で販管費が増加するものの増収効果で吸収して営業利益が9.2億円と同46.1%増加する見込み。尚、これまで手薄だった九州での採用を強化するべく、12年8月に博多採用センターを開設した。配当は1株当たり200円増配の期末3,000円を予定している。

技術者派遣・請負・委託事業

自動車関連企業への派遣及び開発設計の委託(同社から見た場合「受託」)を中心に技術社員の稼働数が増加する。特に下期は、上期に開始した開発設計が本格化する他、半導体製造装置メーカー向けの人員増も見込まれる。利益面では、上期に管理部門の増強や開発設計の委託に伴う拠点の開設等の先行投資を計画しており、下期も技術社員の増員に伴う採用費用の増加や管理体制強化に伴う経費増等が見込まれるものの、増収効果で吸収する。

製造請負・受託・派遣事業

第1四半期(7-9月)は前期末にかけて技能社員の稼動数が減少した影響が残る事に加え、顧客企業の減産や抵触日(派遣先の派遣受入期間の終了)による稼働社員数の減少も見込まれる。ただ、第2四半期(10-12月)に100名規模の大型案件数件がスタートする他、派遣法改正を前に顕著となった様子見の一巡で派遣ニーズの回復が見込まれ(法改正に伴う規制強化が緩やかだったため派遣への回帰が予想される)、第3四半期(1-3月)以降も回復基調が続く見込み。利益面では、上期は求人費や採用費の増加が負担となるが、売上が回復する下期以降は増収効果と単価の回復で吸収する。

今後の注目点
規制強化に加え、製造だけでなく開発も海外シフトを進めるメーカーが少なくない。しかし、依然として国内の開発・製造系人材サービス市場は膨大であり、同社が事業を拡大させるには十分。このため、強みである営業力と採用力を活かし、多様な顧客ニーズを取り込んでいく事ができるか否かが今後のポイントとなる。また、収益に貢献するまでには時間を要するだろうし、社会制度的にも難しい面があると思うが、長期的な観点から中国ビジネスにも期待したい。
株式会社インベストメントブリッジ
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