(2146:JASDAQ) UTホールディングス 2013年3月期第1四半期業績レポート

2012/09/11

今回のポイント

・13/3期1Q(4-6月)は前年同期比25.3%の増収、同23.1%の経常減益。2012年問題(後述)を契機とした派遣から請負への切替ニーズの取り込みが進み、取引先顧客工場数と稼働社員数が急増。現場の管理費用や採用関連費用が増加し営業利益が同20.3%減少した。

・2Q(7-9月)はオペレーションが軌道化し7,000名強の社員がフル稼働。一方、1Qに急増した管理費用や採用関連費用が通常のペースに落ち着くため、7.5億円~8億円の営業利益を確保できる見込み。このため、売上高140億円(前年同期比19.6%増)、営業利益10億円(同33.2%増)を見込む上期予想の達成に不安はないようだ。

・通期予想は売上高300億円(前期比24.5%増)、営業利益25億円(同72.0%増)。約7,000名の稼働数から得られる収益でほぼ達成できる見込み。配当は1株当たり100円増配の期末2,600円を予定。

会社概要
構内作業(工場内作業)の請負や製造派遣を手掛ける製造アウトソーシングサービス大手。半導体向けサービスからスタートし、液晶・太陽電池・二次電池等へ展開。世界的なコスト競争にさらされている自動車関連や工業化が進む住宅関連でも顧客開拓が進んでいる。同社自身は純粋持株会社としてグループを統括し、実際のサービスは連結子会社6社が提供。デバイス設計(デザイン)等を手掛ける。

【事業内容】

事業は、構内作業(工場内作業)の請負及び製造派遣のアウトソーシング事業と、ソフトウェアの受託開発及び機械・電気・電子の設計開発にかかる技術者派遣の設計開発事業に分かれ、売上構成比は、それぞれ96.7%、3.3%(12/3期)。
尚、請負では各工程の製造オペレーションから装置メンテナンスや保全業務までを一括して受託。コスト削減だけで無く、構内作業全体のパフォーマンスも高めるため、取引先から高い評価を受けている。パナソニックグループ、ソニーグループ、ロームグループ、東芝グループ等を主要顧客とするが、太陽電池、2次電池、LED、更には自動車関連や住宅関連等での顧客開拓も進んでいる。

【事業環境と同社の強み】

一段のコストダウンニーズの高まりや2012年問題の顕在化を受けて、国内のモノづくりの現場で「請負化」の流れが加速している。また、注目された労働者派遣法の改正も、「製造派遣の3年間の期間制限」が残ったものの、製造派遣の禁止や登録型派遣の禁止が削除され、12年3月に成立した(同年10月施行)。逆に同法において「専ら派遣」の規制(グループ企業内派遣の8割規制)が強化された事は同社にとってビジネスチャンスになる。加えて、政府・与党が今国会中の成立を目指している改正労働契約法も、パートや契約社員など期間を定めて働く「有期雇用労働者」の契約期間が通算で5年を超える場合、労働者が希望すれば無期雇用に切り替える事を義務付けるものだけに、成立すれば同社が得意とする請負への流れを加速させよう。
こうした中、同社は、①安定した労働力(離職率2%/月。同業大手は4~8%/月)や②顧客ニーズに柔軟に対応できる動員力に加え、③最も難しい半導体分野での請負実績、及び④整備されたコンプライアンス体制を強みとして、外部労働力の活用ニーズの取り込みに成功している。

【ビジネスモデルの4つの特徴】

同社グループのビジネスモデルには、専門特化、常用雇用、チームアプローチ(請負)、及び受注先行の採用モデル、という4つの特長がある。半導体等の高度な分野に専門特化する事で高度な技術とノウハウの蓄積を図ると共に、常用雇用による安定した雇用環境を提供する事で社員の定着率を高め高品質なサービスを実現している。また、人材派遣ニーズにも対応しつつ、チームとして組織された専門技能者・技術者による請負を主体とする事で高い生産性を実現し顧客満足度を高めている。一方、常用雇用とする事で同社は固定費負担のリスクを負うが、受注が確定してから採用活動を実施する事で稼働率100%を恒常化しリスクを回避している。

【新中期経営計画(12/3期~16/3期)】

「半導体請負No.1」から、質・量ともに「日本一の請負会社」を目指す新中期経営計画(~16/3期)が進行中である。 ①地方における良質な雇用機会の創出、②派遣・請負で働く人達のキャリアアップ機会の創出、及び③製造業の横断的な雇用調整機能の3点を自社の社会的役割と認識し、この役割を果たすべく事業に取り組む事で、最終の16/3期に稼働人員20,000名体制(=取引先工場300工場×1工場当たり稼働人員70名)を確立し、売上高750億円、営業利益90億円、当期純利益49.1億円を達成したい考え。また、EPS成長率30%以上(5ヵ年の平均)及び配当性向30%以上をコミットメントしている。

半導体製造装置事業の苦戦で10/3期にかけて業績が悪化した。このため、10/3期に同事業を売却しアウトソーシング事業中心の事業構造へ転換。11/3期は業績がV字回復した。12/3期は自動車部品や建材等、非エレクトロニクス分野で顧客開拓が進んだものの、これら特命顧客向けサービスにかかる先行投資が負担となる中、半導体関連顧客の生産調整が響いた。続く13/3期は自動車部品や建材等、新規分野の業績寄与に加え、2012年問題にかかる需要の取り込みで成長軌道に回帰する。

2013年3月期第1四半期決算
前年同期比25.3%の増収、同23.2%の経常減益

売上高は前年同期比25.3%増の71.1億円。2012年問題を契機とした派遣から請負への切替ニーズの取り込みが進み、顧客工場数が前期末の237工場から361工場に増加し(中期経営計画の目標数300工場を超過)、つれて社員の稼動数も6,082名から7,003名に増加した。尚、前年同期(11年6月末)の顧客工場数は207工場、社員稼動数5,414名。

ただ、顧客工場数の増加で現場の管理・監督等にかかる費用が急増し売上総利益率が一時的に悪化。採用関連費用を中心に販管費も増加し、営業利益は2.7億円と同20.3%減少した。一方、四半期純利益が増加したのは、特別損失の減少(前年同期は災害による損失30百万円等を計上)及び税負担の減少による。

(注)2012年問題

生産がリーマンショック後の落ち込みから急回復した2009年以降、生産現場では派遣労働者の活用が再開したが、この労働者派遣契約が3年後の2012年に抵触日を迎える。抵触日を超えて派遣労働者や期間工を雇用する事は法律により禁じられているため、メーカー各社は派遣労働者や期間工を「自社雇用」するか「請負」に切り替えるかの選択を迫られる。

労働者派遣契約は年度初めの4月や年度の折り返しの10月に集中する傾向があり、同社は4月からの請負への切替ニーズの取り込みに成功した。また、生産の回復で人材需要が増加しているトヨタグループを中心とした自動車関連や復興需要を追い風とする建材メーカーの需要の取り込みにも成功しており、この第1四半期は、従来からの主要取引先である半導体関連の売上構成比が47.5%にとどまる一方、自動車関連が10%を超え、建材も6%弱を占めるに至った。

第1四半期末の総資産は前期末比8.0億円増の93.5億円。事業拡大に伴う運転資金の増加に対して、短期借入金を中心に対応した。この結果、第1四半期末の自己資本比率は29.5%と前期末比7ポイント低下した。尚、固定資産の「投資その他」の大半は長期前払費用であり(12年6月:1,463百万円)、これは「ESOP:Employee Stock Ownership Plan(株式給付信託)」の導入に伴う信託分を長期前払費用として計上している事による。

2013年3月期業績予想
(1)第2四半期(7-9月)以降の見通し

上期及び通期の業績予想に変更はなかった。第2四半期(7-9月)はオペレーションが軌道化し7,000名強の社員がフル稼働。一方、第1四半期に急増した管理費用や採用関連費用が本来の水準に落ち着くため、7.5億円~8億円の営業利益を確保できる見込み。このため、売上高140億円(前年同期比19.6%増)、営業利益10億円(同33.2%増)を見込む上期予想の達成に不安はないようだ。

期末の稼働技術者数は8,000名を予定しており、抵触日のピークを迎える10月に向け請負化ニーズの取り込みを図る。このため、第3四半期(10-12月)は、再び利益率が低下する可能性があるが、期末に向け、稼働社員数8,000名、四半期売上高80億円体制の構築を目指す(コストコントロールを誤らない限り10億円程度の営業利益を確保できる見込み)。

通期予想は、売上高300億円(前期比24.5%増)、営業利益25億円(同72.0%増)。約7,000名の稼働数から得られる収益でほぼ達成できる見込みだが、足元、既存顧客との間で商談が進んでいるバックオーダーの着実な取り込みや良好な事業環境を活かした顧客深耕で予想を上回る着地を目指している。配当は1株当たり100円増配の期末2,600円を予定。

(2)事業環境のポイントと今後の取り組み -請負化によるシェアアップと人材流動化支援サービス-

昨今のメーカーのアウトソーシングニーズは、大きく①増産対応ニーズ、②2012年問題による請負化ニーズ(生産動向とは無関係)、及び③構造改革ニーズ(人材の流動化ニーズ、生産動向とは無関係)の3つに分ける事ができる。

事業環境

第1四半期にみられたトヨタグループとの取引拡大は①増産対応ニーズによるものだが、②2012年問題による請負化ニーズは生産動向に依存しないアウトソーシングニーズであり、その取り込みが13/3期の大きなポイントとなっている。同社がターゲットとするのは、工場内の外部労働力比率が高く、技能の習熟が必要とされる企業。具体的には、自動車部品メーカーや建材メーカー等の請負化ニーズの取り込みに力を入れていく(自動車メーカーは正社員比率が高いが、部品メーカーは50%程度を派遣に依存しており2012年問題が深刻)。

また、③構造改革ニーズ(人材の流動化ニーズ)も生産動向に依存しないアウトソーシングニーズである。同社はこれまで人材供給サービスを中心に展開してきたが、今後は人材流動化支援サービスの育成にも力を入れ、車の両輪としていく考え(リストラ関連のニーズに対応する事は、人手不足の際の案件が受注し易くなると言う)。この一環として、アウトプレースメントを事業領域とするUTキャリア(株)を4月に設立した。

人材流動化支援サービス

人材流動化支援サービスは、インハウスソリューションサービス、アウトプレースメントサービス、及び出向サポートサービスの3つのサービスからなり、インハウスソリューションサービスはリストラ後の雇用確保を支援し、アウトプレースメントサービスは再就職を支援するもの。また、出向サポートサービスは工場の閉鎖を考えているが、人員削減を望まない場合、他社の工場等への出向を支援する。

このうち、インハウスソリューションサービスは既に実績があり、出向サポートサービスについては数件の商談が進行中。一方、アウトプレースメントサービスについては、案件が少なくなる好況時の収益確保が課題であり、多くの企業が好況時に淘汰された。しかし同社の場合、既存の人材供給サービスにおいて、社員のキャリア管理や技能評価に加え、メンタルサポートを兼ねたコンサルも実施しているため、アウトプレースメントサービスを開始するに当たって、特段の新たなコストが発生しない(コストは人材供給サービスにおいて吸収されている)。アウトプレースメントサービスでは、現在、リクルート系とパソナ系の企業2社が評価を得ていると言う。

今後の注目点
請負化ニーズの取り込みが順調だ。本社が一括して工場の請負化を進めるケースが多いため、これを受託すると顧客工場数を一気に増やす事ができるようだ。ただ、必ずしも採算の良い工場ばかりではないようで、第1四半期の利益の下振れ要因の一つとなった。当面はシェアアップを優先して積極的に案件を取り込んでいく考えで、低採算工場の収益性改善を並行して進めていく。先ずは第1四半期に低下した収益性が、想定通り第2四半期に改善するか注目したい。
株式会社インベストメントブリッジ
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