(4573:JASDAQ) アールテック・ウエノ 2013年3月期第1四半期業績レポート

2012/09/06

今回のポイント

・2013年3月期第1四半期は、前期比19.6%減収、同97.5%営業減益となった。レスキュラの減収及び研究開発費の増加が利益を圧迫する結果となったが、売上高、利益共に会社計画線で推移しているとのこと。

・2013年3月期会社計画は、前期比9.4%増収、同41.9%営業減益。一株配当は2,000円とする見込み。レスキュラは前期比0.5%減収を計画。国内において2012年度の薬価改定(前期比5.6%減)等の影響を受ける一方、下期以降の北米市場での売上寄与を見込んでいる。アミティーザは前期比15.0%増収を見込む。日本国内では慢性便秘症治療薬が今下期から売上に寄与してくる計画。なお、かねてより未確定であった武田薬品工業との仲裁申立てについては、独占的供給契約は継続することとなり、損害賠償も認められなかった。その結果、北米市場においては引き続きアミティーザの独占的供給計画に基づき、武田薬品に販売する予定。研究開発費は前期比315百万円増の1,233百万円を計画。

・今期は臨床試験の開始及び臨床試験の開始に向けた非臨床試験を積極的に推進する予定。研究開発パイプラインの開発ステージアップに伴い、短期的には研究開発費負担が重くなる一方、中期的な潜在利益顕在化への期待は一段と高まったと言っていいだろう。今期注力するパイプラインは、重症ドライアイ治療薬(開発コード:RU-101)、アトピー性皮膚炎等(開発コード:RTU-1096)。将来業績を左右する研究開発パイプラインは各々順調に進捗しており、ライセンスアウト、提携などの具現化も視野に入ってきた。既存事業が生み出す安定収益及び高配当を確保しつつ、新規事業の実現性も高まっていることをもっと評価すべきと考える。

会社概要
眼科、皮膚科に分野を特化し、医薬品の研究開発・販売に取り組む創薬ベンチャー。新規医薬品の研究開発事業、医薬品の製造・販売事業、医薬品開発支援及び受託製造サービス事業の3事業が主。具体的には、緑内障・高眼圧症治療薬「レスキュラ」の製造・販売と慢性特発性便秘症及び便秘型過敏性腸症候群治療薬「アミティーザ」の受託製造により収益を確保しつつ、眼科領域及び皮膚科領域の局所疾患をターゲットとした新薬の開発に取り組んでいる。「レスキュラ」については、94年の発売以来、世界45カ国で50万人以上の患者に処方されている。
医師目線の経営(Physician-Oriented Company)、自社工場を有すること、既に収益源を確保していること、などが他創薬ベンチャーとの大きな違いになっている。2012年3月期の売上構成比は、レスキュラの製造・販売が48.0%、アミティーザの受託製造が50.0%、医薬品の研究開発支援サービスが2.0%。通期ベースではレスキュラとアミティーザの販売構成比が初めて逆転した。
2013年3月期第1四半期決算
レスキュラの減収と研究開発費増加が営業減益に直結

2013年3月期第1四半期は、前期比19.6%減収、同97.5%営業減益となった。会社計画に対する達成率は、売上高16.7%、営業利益1.1%。レスキュラの減収及び研究開発費の増加が利益を圧迫する結果となったが、売上高、利益共に会社計画線で想定しているとのこと。
なお、かねてより未確定であった武田薬品工業との仲裁申立ての結果が7月6日に判明した。具体的には、武田薬品工業及びスキャンポ社と締結したアミティーザの独占的供給契約は継続することとなり、損害賠償も認められなかった。

レスキュラ

レスキュラは前期比43.4%減収での着地となった。製品価値の最大化に向け販売先との共同プロモーションに注力してはいるものの、薬価改定(前年同期比5.6%減)等の影響を補うには至らなかった。
主なプロモーション施策は次の通り。
1) 緑内障の早期発見を目指して眼科医を対象に眼底読影勉強会を開催
2) 製品説明会等を通じたレスキュラの販売促進活動
3) 学会セミナーの開催や講演会記録集等の作成により製品特性等の情報提供を活発的に行う

アミティーザ

一方、アミティーザは、前期比0.6%増収となった。引き続き円高がネガティブに作用しているものの、前期並みの売上を維持した。
なお、2010年10月にスキャンポファーマが日本において慢性便秘症治療薬としての製造販売承認申請を行った件についてだが、本年7月9日に製造販売承認を取得した。米国においても非癌性疼痛患者を対象としたオピオイド誘発性腸機能障害治療薬を新たな適応として追加新薬申請を行っており、今後販売地域の拡大や適応拡大が期待される。

(3)武田薬品工業との仲裁申立てについて

2010年3月にスキャンポ社が武田薬品に対し、アミティーザの共同販売契約違反による損害賠償と契約の終了を請求する仲裁を国際仲裁裁判所に申し立て、2010年8月には同社も武田薬品に対する仲裁を申立てていた。
これに対し、国際仲裁裁判所から本年7月6日に同社及びスキャンポ社の主張は認められないとの結果が発表された。その結果、同社、武田薬品及びスキャンポ社が2004年に締結したアミティーザの独占的供給契約は継続することとなり、損害賠償については認められなかった。

2012年6月末の総資産は8,897百万円と、前期末に比べ432百万円減少した。剰余金の配当及びその他有価証券評価差額金の減少により純資産が減少したことが主因。

2013年3月期業績予想
将来の利益実現性は一段と高まっている

前述の武田薬品工業に対する仲裁判断結果が判明したことを受け、8月9日に通期会社計画が開示された。それによると2013年3月期は、前期比9.4%増収、同41.9%営業減益を計画するとのこと。一株配当は2,000円とする見込み。
レスキュラは前期比0.5%減収を計画。国内において2012年度の薬価改定(前期比5.6%減)等の影響を受ける一方、下期以降の北米市場での売上寄与を見込んでいる。Sucampo AG社は北米地域においてレスキュラの添付文書の記載内容を変更して再上市ができるよう米国食品医薬局(FDA)と協議を進めており、実現した際には独占的製造供給権を保有する同社が受ける恩恵も大きい。
アミティーザは前期比15.0%増収を見込む。日本国内では7月5日にスキャンポファーマが慢性便秘症治療薬の製造販売承認申請を取得しており、今下期から売上に寄与してくる計画。米国では年商20億円程度の実績があることから、国内においても数年後には10億円程度まで拡大することが期待される。北米市場においては引き続きアミティーザの独占的供給計画に基づき、武田薬品に販売する予定。
研究開発費は前期比315百万円増の1,233百万円を計画。今期は臨床試験の開始及び臨床試験の開始に向けた非臨床試験を積極的に推進する予定。研究開発パイプラインの開発ステージアップに伴い、短期的には研究開発費負担が重くなるため、収益は圧迫されることとなる。しかし、中期的な潜在利益顕在化への期待は一段と高まったと判断すべきだろう。今期注力するパイプラインは、重症ドライアイ治療薬(開発コード:RU-101)、アトピー性皮膚炎等(開発コード:RTU-1096)。

新薬開発への取組み
同社では新薬の開発ターゲット領域として以下の3分野を掲げている(いずれも、眼科、皮膚科を対象)。

1.アンメット・メディカル・ニーズ領域
(未だ満足のゆく治療法がない医療領域)
2.オーファンドラッグ領域(希少疾病医薬品領域)
3.アンチエイジング領域、生活改善薬領域

この中で今後有望な主要パイプラインは以下の通りである。

◎アンメット・メディカル・ニーズ領域:重症ドライアイに対する新規点眼薬(RU-101)

ドライアイは、涙液層や眼表面の障害を特徴とする慢性で多因性の症状が多くみられる。PCなど目を酷使する機会が多い現代、国内の患者数は2,200万人とも言われている。同社開発コード「RU-101」は、遺伝子組換え人血清アルブミンを有効成分(原材料)とするものであるが、2010年8月に田辺三菱製薬との契約が解除され原料供給がストップしたため、開発を中断していた。しかし、2011年10月にデンマークのNovozymes社との契約を締結し原料供給を受けることができるようになったため、開発を再開している。
アルブミンは、生体にとって重要なタンパクで安全性が高く、重症ドライアイに有効とみられている。但し、献血アルブミン製剤では感染症の危険性が完全には除外できないという問題を抱えていたが、人のアルブミンを産生する遺伝子を酵母に組み込み酵母で人アルブミンを生成した「遺伝子組換え人血清アルブミン製剤」であれば感染症の心配は無くなる。
2012年度中には米国で臨床試験フェーズⅠ及びフェーズⅡを実施する計画となっており、今後の進捗に期待が集まっている。ドライアイの市場は過去5年で約2倍に成長しており、全世界での市場規模は約1,500億円とも言われている。今後も年率10%の成長が見込まれる市場である。

◎アンメット・メディカル・ニーズ領域:アトピー性皮膚炎治療薬(RTU-1096)

アトピー性皮膚炎とは、アレルギー体質により皮膚のバリアー機能が低下し、様々な刺激が加わることでかゆみを伴う慢性の湿疹、皮膚炎を生じ、症状の悪化と改善を繰り返す疾患を指す。従来は学童期に自然治癒すると考えられていたが、成人まで持ちこす例や成人してからの発症・再発の例が近年増加している。現在は薬物による対症治療で、ステロイドの外用および免疫抑制剤の外用、抗ヒスタミン薬の内服、保湿剤の塗布を行うが、皮膚刺激性や局所副作用等の安全性の観点から全ての医療ニーズを満たしているとは言えず、より安全性の高い薬剤の開発が医療現場より求められているのが実情である。同社は糖尿病で起こる白内障向けの目薬を開発中に、この新薬候補がアトピー性皮膚炎の原因の一つと関係のあるタンパク質を抑制する働きがあることに着目し、「RTU-1096」を発見した。
2013年度中の臨床試験開始を目指しており、2012年度はそれに向けた非臨床試験を進める計画。アトピー性皮膚炎の患者の数は、日本では600万人、米国では1,000万人いると言われている。日本で、治療に使う外用薬(塗り薬)の市場規模は約350億円とされている。そのほか、ある調査によると、アトピー性皮膚炎に限らず、喘息/アレルギー性鼻炎/関節リウマチ/乾癬/炎症性腸疾患等の自己免疫疾患を対象とする2009年度の免疫・アレルギー薬の市場規模は、日・米・欧で合わせて約5兆円という巨大な市場であり、今後の進捗には期待が集まる。

◎アンチエイジング領域(生活改善薬領域):睫毛貧毛症治療薬(RK-023)

睫毛貧毛症とは、睫毛が貧弱で短い・まばら・色が薄いなどの原因で、眼にほこりなどの異物や異常な光が入ることを防ぐという睫毛本来の機能が十分に発揮できない疾患のことである。同社は、新規生理活性脂肪酸誘導体である新規化合物(開発コード RK-023)を、注力すべき研究開発領域の中の一つである「アンチエイジング・生活改善薬」の皮膚疾患領域の治療薬として開発しており、睫毛貧毛症治療薬開発の一環として第1相臨床試験を完了した(2012年4月24日リリース)。RK-023の安全性を検討することを目的として、Good Clinical Practice (GCP) に基づき、睫毛の生え際への塗布、薬液が予期せず眼に入る可能性を踏まえた点眼など各種試験を行った結果、RK-023に副作用は認められず、眼圧下降や充血などの眼科的所見も認められず、安全性が確認された。
睫毛に関連する市場はマスカラなどの化粧品を含め日本国内では約370億円と推定される。米国ではFDAにより承認され販売されている医療用医薬品は一剤(アラガン社の「ラティース」)のみだが、市場自体は非常に大きい。

◎東北大学とのウノプロストンの新規ドラッグデリバリーシステムの共同研究

新たな取り組みとして、東北大学と共同研究で同社の化合物であるイソプロピル ウノプロストンのドラッグデリバリーシステムの開発が始められている。実現すれば頻回点眼が困難な網膜色素変性の患者に対する有効な治療法となる可能性がある。このデバイスは従来知られている眼内へ挿入するタイプと異なり、強膜側移植による硝子体手術を必要としない低侵襲的な経強膜ドラッグデリバリーシステムである。更にウノプロストンは現在治療法のない萎縮型加齢黄斑変性の治療薬として適応を拡大することが可能と考えられている。

今後の注目点
研究開発パイプラインの開発ステージアップに伴い、短期的には研究開発費負担が重くなるものの、中期的展望は一段と明るさを増している。目先の収益水準に左右されることなく、本質的な中期成長イメージ自体は揺らいでいないことを再確認すべきだろう。
懸案だった武田薬品工業との仲裁申し立てについては、同社にとって好ましくない結果に終わったものの、不確定要素が消失したことをもっと前向きに受け止めていきたい。
株式会社インベストメントブリッジ
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