ナノキャリア株式会社(4571 東証マザーズ)
脳腫瘍遺伝子治療薬VB-111のもたらす価値に注目

2017/12/25

ベーシックレポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

DDS創薬ベンチャーからがん領域バイオ創薬企業へ変身中
ナノキャリア株式会社は、その独自の「ミセル化ナノ粒子」の技術を用いたDDS製剤の創薬ベンチャーとして出発した。がん治療の現場で広く普及している既存の抗がん剤にその技術を適応し、抗がん剤の治療効果を増大し、副作用を軽減する研究開発を行ってきた。
さらに、近年では、そのがん領域での知見を活用して、既存抗がん剤への応用だけではなく、新規の薬剤候補への応用や、核酸へのアプローチ、ミセルの標的化などのほか、外部の特色のあるベンチャーへの出資、画期的な薬剤の導入により、がん領域でのプロダクト・ラインを充実させることによって、DDS製剤の創薬ベンチャーから、バイオ創薬企業への変身を図っているところである。たとえば、2017年11月にイスラエルのVBL社から導入すると発表されたVB-111は、難治性の脳腫瘍に対する画期的な遺伝子治療薬として注目される。

画期的なVB-111の価値を織り込むと現在の時価総額の2倍
ナノキャリアの株価は低迷状態が続いている。前述のように、11月に画期的な遺伝子治療薬VB-111の導入を発表しても、株式市場ではほとんど反応が見られなかった。すなわち、VB-111の価値は、まだ市場では織り込まれていない。そこで、VB-111の価値を、仮定をおいて計算すると、312億円ほどと試算され、これを現在の時価総額(288億円)と合算すると約600億円と、2倍以上の水準を見込むことができる。
2018年1-3月期には、VB-111の米国でのPh3の最初の結果の速報が出てくる予定である。良好であったPh2と同様の結果が出てくれば、他がん腫適応も視野に入るため、その価値が評価されるカタリストとなる。

これまでの株価低迷の3要因は必ずしも妥当ではない
これまでの株価の低迷の背景には、①最初の成功例として期待されたNK105(日本化薬に導出)の開発一時中断、②オプジーボなどの免疫療法薬の登場で既存の抗がん剤がなくなるのでは?という誤解、③自社開発と外部出資・導入のための資金に対する懸念があると考えられる。
まず、日本化薬に導出したNK105の技術は第1世代の技術で、他の主要パイプラインは第2世代の技術であること、また、開発方針に依存した問題という面もあることからNK105の開発一時中断は、ナノキャリアの技術全体を否定するものではなく、そのほかの主要パイプラインの開発には影響しないと考えられる。また、DDSの開発では追加・再試験のケースはよくあるとのことである。
次に、がん免疫療法に注目が集まっている点であるが、これらは、癌種により効果に差があり、全く効かないケースもあるため、現状の多くの臨床試験は、既存の抗がん剤との併用投与がなされており、既存抗がん剤のDDS製剤化の意義は依然として高い。
さらに、資金面での懸念であるが、2017年9月末時点での手元流動性は96億円ほど(CB残高を除いたネットキャッシュは71億円ほど)である。外部からの導入によるマイルストーンの支払いについて、自社開発のための研究開発費とあわせ、向こう2年超の間に資金が枯渇しないように会社側はスケジュールをコントロールしていると考えられる。
3つの要因に関する正しい理解が進めば、さらにVB-111の価値を織り込み易くなるであろう。

 

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