私が投資するなら、こんな会社

2015/03/30

・先行きをどう見るか、いつも心配になる。不安ならないようにしたいと思うと、株式投資などしない方がよいと考えてしまう。一方で、その逆もある。少しくらいの損は気にしない。最初からそのつもりだから、毎日の株価など気にしないという人もいる。しかし、株を買って放っておくには、それなりの根拠が必要であろう。

・長期の視点で投資をするということと、買ったまま放っておく、まして下がってしまったら上がるまで待っている、というのでは意味が違う。株価が上がってきたら、やれやれと思って売ってしまう人もいる。それでは、含み損はカバーしたとしても、何のための投資だったのか。

・よい会社に投資すれば、安心かもしれない。では、よい会社とはどんな会社か。いろいろな考えがあろうが、私は何よりも雇用を増やす会社がよい会社だと考えている。企業が価値を生みだすには、何といっても社員が大事である。次に、雇用が増えても、社員の1人当たりの生産性が上がっていなければ、社員の給料は増えない。生産性とは1人当たりの付加価値であるから、社員数 × 1人当たり生産性 = 会社全体の付加価値となる。付加価値とは企業が生み出す経済的価値であるから、これを長期的に増やす会社は、社会にとっても重要な役割を果たしているといえよう。

・ところがこれがスムーズにはいかない。会社の歴史を社員数でみると、初めの頃は増えても、そのうち止まってくる。次に徐々に減り出し、苦境に陥るとリストラで大幅人員削減を余儀なくされたりする。これは正社員の場合であるが、今は正社員以外の非正規労働を活用している企業も多い。雇用の多様化を通して働き易くしている面もあるが、働きたいのに十分な機会が得られない場合もある。それを能力の差であると片づけてしまうわけにもいかない。しかし、企業としては、何らかの形で社員を評価していくので、必ず差は付いてくる。

・「ビショナリー・カンパニー」のジェームズ・コリンズは、企業は成長期に傲慢になり、拡大期に無規律になりがちである。次第にリスクを無視するようになり、遂には苦境に直面する。そうすると、一発逆転を狙いたくなる。それが無謀な結果として転落を招き、遂には屈服するか消滅してしまう、と警鐘を鳴らしている。

・我々はどんな会社に投資したいのか。それは「強くなろうとする企業」であろう。この点については、誰も異論はないと思う。しかし、そんな抽象的な話ではイメージがわかない、というのもその通りである。企業の価値を生みだす仕組みがビジネスモデルであるから、そのビジネスモデルが影っている時、再び輝くようにどのような手を打っているかをみていく。どんな企業も停滞モデルから成長モデルへ変身しようと努力している。その努力のプロセスに注目したい。

・身近な生活を見ても、広く社会を見ても、さまざまな課題がある。政治が悪いと文句をいってもよいが、それだけでは遠吠えにすぎない。社会の課題を解決するように頑張っている組織を応援したくなるのは当然である。自分にとってピンときたものを投資対象にしていくのが、1つのソリューション(解決法)であろう。

・例えば内需は伸びないが、外需は伸びる。アジアでは、アセアン経済統合が今年末からスタートするので、アセアンの途上国で活躍する企業にビジネスチャンスが広がろう。この15年間に見られたように、中国に進出した日本企業がみな上手くいったわけではない、苦労した企業の方が多い。そして、中国から出ていく時も苦労している。優勝劣敗は世の常であるから、よくみていく必要がある。

・日本の人口は減少に転じた。それを逆手に取る発想も必要である。生産年齢人口は毎年-0.5%ペースで減っていくので、1人当たり付加価値(生産性)をよほど上げないと、日本のGDPは伸びない。知財やロボットの活用が決め手となろう。雇用を増やさなくても、生産性を断トツに上げる企業が出てこよう。デフレの時代の安売り競争ではなく、良い質の商品やサービスを「適切に高く売る」ことができるかどうかが問われる。

・これから年金は減っていく。そう考えて、覚悟しておいた方がよい。確定拠出年金で自分の分は自分で掛けて確保していくとしても、国のベースとなる年金は賦課方式である。つまり、若い世代から集めて高齢者世代に配るという方式である。若い世代の人口が多くて、高齢者が少ない時はよい仕組みであったが、それが逆転して、若者1人で高齢者2人の面倒をみることなど無理で、到底できない。

・現在と将来の負担を平等にする動きは強まっていこう。そうすると、ヘルスケアの規制緩和は進むことになり、働ける人は死ぬまで働くのが当たり前になってくる。豊かな老後とは、いつまでも元気に働けることである。ここに新しい市場ができてこよう。一方で、数が減ってくる若者を育て活かす組織が評価されるようになる。若手を主役にして新陳代謝を図る必要があり、共感、共働の組織作りが求められる。知識、知恵を生み出し、活かす企業のビジネスモデルが、持続的成長の原動力となろう。

・かつて円高に苦しんだ企業が多かったが、今や円安で苦しむ企業がいろいろ出ている。一方で、円安を活かして、インバウンド(外国人旅行者を自国へ誘致すること)で稼ぐ仕組みを作っていこうという動きも活発である。株式市場でも、かつて円高は株高であったが、近年では円安が株高を誘導した。しかし、円安は株高がこのまま続くとも思えない。為替に左右されない経営を築いている企業も増えている。円安、円高で一喜一憂しない投資のスタンスも求められよう。

・2017年4月からは、消費税が10%に上がる。2年後であるが、1年後くらいからは、消費税のマイナス効果が再び議論され始めよう。しかし、よく考える必要がある。消費税を上げれば、短期的に消費にマイナスであるのは当然である。それをどう乗り越えるか。上手く対応する企業群を早めに見いだしておくことである。2014年4月前後の教訓が大いに役立とう。

・例えば、4年前からアナリストレポートを書いてフォローしている東祥(コード8920)は、ホリデイスポーツクラブを本業としている。スポーツクラブの規模では業界9位だが、売上高経常利益率は25%と、業界断トツトップである。2011年11月のレポートでは株価547円、時価総額96億円であったが、2014年12月のレポートでは同2351円、同450億円であった。最近(3/27)は同2752円、同527億円まできている。誰もがみんな健康でありたいという志向に対して、将来は売上高経常利益率35%を稼ぎ出せるようなビジネスモデルを実践している。このように、社会の課題に自社の仕組みを組み合わせて、独自の強みを創りだす会社を見いだして、1社ずつコツコツ投資していきたいと思う。

株式会社日本ベル投資研究所
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