アールテック・ウエノ(4573)順調な業績推移

2014/08/14


2014年8月12日、創薬ベンチャー アールテック・ウエノは、2015年3月期第1四半期の実績を発表した。通期の会社予想に対する進捗率は低く留まったものの、以下の理由により会社予想を達成する見込みであることが明らかになった。これに鑑みれば、同社の業績は順調に推移していると考えらよう。

第1四半期としての進捗率が低く留まった主因は、同社が受託製造サービスを展開する「AMITIZA®カプセル」の売上高の一部が後ろ倒しになったことである。第1四半期末までに出荷は完了しているものの、検収のタイミングが第2四半期にずれ込んだだけのようである。一方、網膜色素変性(開発コード:UF-021)に対する第3相臨床試験や重症ドライアイ(開発コード:RU-101)に対する第1/2相臨床試験が順調に進捗していることに伴い、CRO(Contract Research Organization、受託臨床試験実験機関)を利用した臨床試験に係る費用が増加を続けている。

なお、重症ドライアイ(開発コード:RU-101)に関しては、従来通り、2014年秋を目途として第1/2相臨床試験を終了させた後、ライセンスアウト契約締結に向けての交渉を本格化する見通しである。既に複数のライセンスアウト先候補を確保できており、早ければ2015年3月期末までに契約一時金を売上高として計上できる可能性があるとのことである。同社によれば、重症ドライアイ(開発コード:RU-101)の市場規模は、想定患者数350万人の米国において、ピーク時で500億円とのことである。これに鑑みれば、一定水準以上の契約一時金の獲得が期待されよう。また、2015年春を目途として臨床試験の結果が判明するとされている網膜色素変性(開発コード:UF-021)に関しても、詳細は明らかにはされていないものの、同社は何らかのかたちで売上高計上に至る見通しである。

2015年3月期第1四半期

2015年3月期第1四半期は、売上高1,146百万円(前年同期比24.5%減)、営業利益138百万円(69.7%減)、経常利益136百万円(72.9.%減)、純利益114百万円(67.5%減)での着地となった。第2四半期累計期間の会社予想に対する進捗率は、売上高で40.3%、営業利益で26.1%に留まった。

同社が受託製造サービスを展開する慢性特発性便秘症などの治療薬「AMITIZA®カプセル」が売上高823 百万円(22.6%減)となった一方、緑内障・高眼圧症治療薬「レスキュラ®点眼液」の製造販売は、売上高261 百万円(41.7%減)となった結果、同社としても大幅減収を余儀なくされた。

「AMITIZA®カプセル」の売上高に関しては、日本市場313百万円(130.2%増)、北米市場509百万円(45.1%減)である。市場開拓が進む日本市場においては、前年同期の2倍以上に売上高が拡大したものの、150百万円~160百万円に及ぶ売上高の後ろ倒しが発生した北米市場では、一時的に減収となった。また、「レスキュラ®点眼液」に関しては、前年同期にあった北米市場での売上高が剥離したことに加えて、日本市場では、数量減及び薬価改定による単価下落が発生し大幅減収となった。ただし、これは当初の会社予想に織り込まれていた通りである。

また、営業利益率12.1%(18.0%ポイント低下)での着地である。製造面での固定費に対するエクスポージャーが小さい同社においては、売上総利益率が63.5%(0.9%ポイント低下)と、安定的に推移した。ただし、販売管理費売上高比率が51.4%(17.1%ポイント上昇)と、前年同期に対して大きく上昇したため、同社の営業利益率は大きく低下した。

販売管理費は、589百万円(12.9%増)での着地となった。研究開発費を除く販売管理費は実質的に前年同期並みに留まったものの、研究開発費が397百万円(20.2%増)と、大幅に増加したことが大きく影響した。また、研究開発費の増加は、先述のCROを利用した臨床試験に係る費用の増加に起因している。

2015年3月期会社予想

2015年3月期に対する会社予想は据え置かれている。売上高5,763百万円(前年比2.6%増)、営業利益1,431百万円(0.8%増)、経常利益1,434百万円(2.9%減)、純利益1,003百万円(5.5%減)の見通しである。また、一株当たり配当金予定額25.0円(配当性向48.1%)と、これも同様に据え置かれている。

積極的に株主還元を進める同社は、2013年3月期から2014年3月期に向けての大幅増益を受けて、一株当たり配当金を15.0円(配当性向52.2%)から25.0円(配当性向45.4%)へと引き上げた。ただし、2015年3月期に向けては、純利益が調整することが想定されていることもあり、現状においては、一株当たり配当金は2014年3月期に対して同水準に留まる見通しである。

損益計算書(四半期累計、四半期)

損益計算書

事業部門別売上高(四半期累計、四半期)

損益計算書

キャッシュフロー計算書(四半期累計)

損益計算書

貸借対照表(四半期)

損益計算書

以下は、2014年3月期の実績に鑑みて弊社が作成した同社の「企業レポート」の内容である。

1.0 エグゼクティブサマリー(2014年6月23日)

新たな付加価値創造

創薬ベンチャー アールテック・ウエノの中長期的な業績推移には着実な拡大ポテンシャルがある。同社が示唆するところに基づけば、今後5年間の営業利益の伸び率としてCAGR20%前後が期待される。現在の同社において最大の収益源となっている「AMITIZA®カプセル」の受託製造サービスに関しては、今後に向けても売上高の拡大ポテンシャルが高い一方、同社では、純粋な意味での創薬ベンチャーとしての付加価値創造が新たに始まる見通しである。2009年6月のトップマネジメントの交代を契機として、同社は、眼科・皮膚科に特化した新規医薬品の研究開発(創薬)への関与を本格化した。2015年3月期の期中には、ここからの成果がライセンスアウト収入として同社の損益計算書に反映され始める見通しである。また、中長期的な観点に立てば、この動きは時系列的に加速していく方向性にある。

2014年3月期は、売上高5,618 百万円(前年比23.4%増)、営業利益1,419 百万円(80.9%増)での着地となった。また、売上総利益率63.9%(1.3%ポイント上昇)、販管費売上高比率38.7%(6.7%ポイント低下)、そして営業利益率25.3%(8.0%ポイント上昇)である。同社が受託製造サービスを展開する慢性特発性便秘症などの治療薬「AMITIZA®カプセル」は、売上高3,996 百万円(54.1%増)と、大幅増収を達成した。一方、緑内障・高眼圧症治療薬「レスキュラ®点眼液」の製造販売は、売上高1,483 百万円(18.1%減)と、減収を余儀なくされた。前者に関しては、米国での納入価格の変更によるプラス効果に加えて、国内での販売が立ち上がり始めたことが大きく寄与した。既に特許が切れている後者の減収を補って余りある大幅増収となった。両者を合算した医薬品の製造販売が同社の売上高の97.5%を占めたことに鑑みれば、両者によって同社の損益が決定されたと考えられよう。また、同社の損益が大きく向上したのは、売上総利益率の漸増を伴う大幅増収を達成した一方、販売管理費の増加が限定的であったためである。

販売管理費2,172 百万円(5.2%増)は、研究開発費1,372 百万円(7.3%増)、その他の販売管理費800 百万円(2.0%増)から構成された。前者の増加については、同社が創薬ベンチャー企業として開発を進めてきた網膜色素変性治療薬(開発コード:UF-021)の第3 相臨床試験や重症型ドライアイ治療薬(開発コード:RU-101)の第2 相臨床試験前期が進捗していることから、CRO(Contract Research Organization、受託臨床試験実験機関)の利用に起因する費用が増加したことが大きく影響を及ぼした。また、2015年3月期に向けては、両者に関して現在の開発プロセスでの臨床試験が終盤に入るため、研究開発費1,545 百万円(12.6%増)と、更なる費用拠出の増加が見込まれている。現状に至る経緯における研究開発費の拠出に起因する収益の計上はほとんどなかった模様だが、先述の通り、早ければ2015年3月期の期中にはこれが初めて収益化する見通しである。ただし、2015年3月期に対する会社予想にはこれが織り込まれていない。現状においては、売上高5,763百万円(前年比2.6%増)、営業利益1,431百万円(0.8%増)が見込まれている。2015年の秋から年末に向けては、ライセンスアウト収入の計上に向けての具体的な見通しが明らかになるとのことで、その内容に鑑みて、同社は適時開示を行う方向性にあると考えられる。

会社概要
更なる詳細≪PDF版レポート≫の閲覧はこちら

株式会社ウォールデンリサーチジャパン
Walden Research Japan   株式会社ウォールデンリサーチジャパン
ウォールデンリサーチジャパンは、国内株式市場に上場している事業会社の「企業レポート」を作成・配信しています。弊社ホームページ(www.walden.co.jp)にて、弊社が作成したすべてのレポートの最新版を閲覧していただけます。
ここでの情報は、ウォールデンリサーチジャパンが当該事業会社の発信する「IR情報」を中立的かつ専門的な立場から要約して、レポート形式にまとめたものである。「IR情報」とは、すなわち当該事業会社に係る①弊社との個別取材の内容、②機関投資家向け説明会の内容、③適時開示情報、④ホームページの内容等である。

このページのトップへ